Monsieur Shimokawa a trouvé sur le Yomiuri Shimbun en ligne
la critique de ce livre, qui existe aussi en version japonaise.
Je la recopie ci-dessous.
『サ ガン』
マリー・ドミニク・ルリエーヴル著 永田千奈訳
出版社:阪急コミュニケーションズ
発行:2009年5月
ISBN:9784484091068
価格:¥2100 (本体¥2000+税)
絶望のなかの幸福
18歳で書いた処女作『悲しみよこんにちは』で小説 家となったサガンは、世界的な名声と莫大(ばくだい)な印税を手に入れる。しかし、遊びやギャ ンブルに没頭する日々を送り、スピードの出しすぎで自動車事故を起こし大けがをした。結婚に2度失敗し、薬物依存を経て、晩年は借金に苦しむ。親しい人た ちを次々と亡くした孤独な生活ののち、2004年に69歳でこの世を去った。本書は著者が、生前のサガンを知る人たちにインタビューし て作った本だ。事実を詳細に調べてあり、著者の作家に対する愛もよく伝わる。しかし、サ ガンはつい最近の5年前まで生きていたんだから、評伝を書くことで「伝説」にするのは早すぎる気もする。
彼女の人生の概要だけを知ると、 晩年の悲惨さに悲しくなるけれど、本人の自信に満ちた次のような名言を知ると、晩年も彼女流の美学のうちの一つな のかと考えが変わる。
「限界を超える悦(よろこ)びは、趣味やセンスと同じ問題ね。一生、ついてまわるもの。どこまでやれるか試してみたくなることが、次々と出てくる からこそ人生は楽しいの」
また小説では、彼女の人生観がより詩的に表現されている。『ある微笑』で、主人公は自分がいつか死ぬのだという 直感を得たときに激しい幸福感に襲 われる描写がある。『悲しみよこんにちは』の主人公は、不幸だと実感したときに流した涙を「かなり気持ちのいい涙」と呼ぶ。
彼女は破滅す る直前に生を実感する。危機にさらされた生が激烈にきらめく瞬間を愛するのだ。かといって、その先の不幸や孤独までは愛せず、泣き叫 ぶ。どこか無邪気なところが、ただのスリル好きとは違う。
あやしい雲が空を覆うと、嵐の予感にふいにわくわくする。かといってずぶぬれに なるのは大嫌い。そんな子どものような矛盾を生涯持ち続けたところ が、彼女の作品にも人生にも、他の人間には真似できない気品を漂わせている。永田千奈訳。
◇ Marie Dominique Lelièvre =フランスのジャーナリスト。リベラシオン紙のインタビューで頭角を現す。
阪急コミュニケーションズ 2000円
評・ 綿矢りさ(作家)